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05 4月

緊迫するアメリカとイスラエルの関係         坂  達 也     2015年4月5日


緊迫するアメリカとイスラエルの関係

 

           坂  達 也

 

「過去6年間オバマ大統領とイスラエルとの関係は悪化の一途をたどって来ました。私が一月にご報告したように、昨年末の世論調査でアメリカ国民の47.4%はオバマ大統領がイスラエルを見捨てる恐れを持っていることが判明しました。今はその数字がもっと増えていると推測します。このまま行くとオバマ大統領は本当にイスラエルを放棄することを私は恐れます。」とヨエル・ローゼンバーグ氏は三月末に彼のブログで言っております。

 

この懸念は御存知のように、イスラエルのナタニヤーフ首相が米国国会議長ベーナー氏の招待により三月初めに米国議会で演説したことによって更に悪化しました。その後オバマ氏は折からのイスラエル首相の選挙に際し、ナタニヤーフ首相を落選させるべく反対派に資金援助をしたとまで言われ、その選挙結果が予想に反してナタニヤーフ首相の勝利に終わったことによって、この二人の関係は全く相容れない最悪の状態で4月を迎えました。

そしてスイスで開かれていたイランの核開発を阻止する7カ国外相会議で、3月末迄に結論を出すという期限を超えたにもかかわらず、異常としか思われないオバマ大統領の熱意と執拗なねばりによって遂にイランとの枠組み合意に一昨日無理矢理こぎ着けたのです。これに対して昨日の日本経済新聞電子版には「2002年から10年を超える外交交渉が続いてきたイラン核問題で、ようやく合意がまとまった裏には『レガシー(政治的な遺産)』づくりにこだわるオバマ米大統領の執念があった。在任期間が残り2年を切るなか、オバマ氏は野党・共和党の批判と中東諸国の反対を押し切って賭けに出た。」と報道しております。私はこの短い報道はかなり当を得たコメントであると思います。

 

一方これを受けてナタニヤーフ首相はこの枠組み合意に猛反対しており、又米国内でも大統領と共和党主導の国会側との亀裂は増々深まる様相を呈しています。

特に昨年の総選挙で米国議会は上下院共に共和党が過半数を制して以来、大統領は気に入らない議決法案を次々に拒否権を行使して却下するだけでなく(大統領の拒否権発動を無効にするには上院の2/3の票が必要、今はそこまでの共和党議員数はない)かなりの重要事項を国会を通さず独自の裁断で行使し始めました。共和党と多くの国民からは越権行為・憲法違反として大きな非難を浴びつつ、オバマ大統領が独裁者の様相を増々深めて来ていることは否めない事実です。

 

聖書からの警告とオバマ大統領

 

ここでローゼンバーグ氏が指摘する聖書の警告を改めて見てみたいと思います。

先ず創世記12:1−3で、神はイスラエルの父祖アブラハムに対して「わたしが示す地に行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民としてあなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。・・・あなた(イスラエル)を祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」と約束しております。

次にヨエル書3:2で、「わたしは万国の民を集めて・・・その所でわが民・・イスラエルのために彼らをさばく。彼らが・・わたしの地(の一部)を分かち取ったからである。」(口語訳)

その他:エゼキエル書38、39章に出てくるマゴグ・ゴグ(ロシアを含む北方国)とペルシャ(イラン)等の国々がイスラエルに集結され、神のさばきが下ること、又、ゼカリヤ書14:1−2、黙示録16章 ハルマゲドンの戦い

 

上記で神は、イスラエルを祝福する者を祝福し、イスラエルをのろう者をのろうと明言しています。私はアメリカに50年以上住んで来て、アメリカがイスラエルをかばい祝福しない時に、神が何らかの災難をアメリカに下されるのを見て来ましたから、この聖書箇所が真実であることを身に沁みて感じています。

そしてオバマ大統領は、ナタニヤーフ首相再選が決まった時点で、特にパレスチナ問題に対する首相の態度を強く非難し、今までアメリカの歴代大統領がイスラエルを擁護するために国連決議において必要時に拒否権を行使してかばって来たものを、今後は行使しないことを匂わせました。これを称して「アメリカはイスラエルを離婚するのか」と騒がれている通りです。

オバマ氏は、パレスチナ国家を正式に誕生させ、その際にエルサレムを二分し、領土配分でイスラエルの領地を1967年以前の状態に戻すという考え方に賛成しており、本当にそれが国連で採決されれば、まさに上記ヨエル書3:2が実現し、アメリカは神から完全にのろわれることになります。

 

今回アメリカが急いで取り付けたイランとの枠組み合意の影響

 

スイスで大筋が合意されたイランとの交渉妥結案に対して、先ず4月3日発表されたイスラエル首相のステートメントを下記のようにお伝えします。

「私は今イスラエル内閣の会議から帰って来たばかりですが、私たちの内閣は、今回の枠組み提案に全員が強く反対することで一致しました。この提案は私たちの周辺諸国、ひいては世界全体を非常に深刻な危険に曝すだけでなく、イスラエル国家の存続そのものを脅かすものであります。この合意は、イランの核融合施設を含む核施設の一つなりとも閉鎖する提案をしておらず、又今後の技術開発を禁止することも含まれていないのです。

この提案はイランが不正に核開発することを禁止しないばかりか、現在ある施設の全部が温存継続することを許し、その上、今までイランに課せて来た制裁 sanctions のすべてを早急に解除することを約束しております。それによって、数年後にイランは核兵器開発の禁止から完全に解放され、その数ヶ月後には核兵器を手に持って周辺国を超えた世界の国々を侵略することを可能にするもです。

このような合意はイランが核兵器を持つことを阻止するどころか、逆に核爆弾を持たせる道を舗装し助けてやるようなものです。そして中近東各国を核兵器製造競争に追いやり、やがて世界を恐ろしい核戦争に巻き込むことになるでしょう。

二日前にイランの軍司令官が『イスラエルを撲滅することは交渉の余地は全くない non-negotiable イランの最終目標だ。』と宣言しましたが、私はこれに対して『イスラエルの生き残ることこそnon-negotiableなイスラエルの最終目標である』と宣言します。そして、6月30日までに作られる最終契約書には「イスラエル存続の権利」をイランが認めることを明記することを要求します。」

 

一方アメリカ国内での反響はどうかと言えば、今回同意した枠組み案でアメリカは、元々持っていたイランへの要求の最低基準線を強硬なイランの態度によってほとんど骨抜きになるまで、なし崩しに譲歩してしまったと言う疑いを多くの人が持っています。これに対して大統領側はそうではないことを懸命に説明し、防戦を張ろうとしております。それは別途後述します。そして、大統領自身もイスラエルを守る意志を捨てたのではないことを国の内外に強調し始めました。

 

そこで、今真剣に取り沙汰され始めたのが、この大統領主導による「イランとの枠組み同意」を議会が承認するか、否決するかの問題です。議会へは既に先週以前に共和党によって「イランへの更なる制裁 sanctions」法案が提案されておりますが、その採決が「枠組み交渉」の結果が出るまで保留されて来ました。そこでいよいよその採決に入ることになりますが、正直なところ今の時代は何が起こるか一寸先の予測もつきません。採決されないかもしれません。しかし万が一この法案が議会を通れば、当然ながらオバマ氏は大統領拒否権を発動するでしょうから、その後、上院で2/3の多数決でそれを無効に出来るかどうかが今後の焦点となって来ます。事実、共和党議員だけでなく、一部の民主党議員の中にも今回の「枠組み同意」に懸念と不満を持つ人たちが出て来ており、その人たちが加われば、大統領拒否をくつがえす可能性が充分あるとも報道されており、大統領はその議会対策のために本腰を入れ始めました。

もっとも、この「イランへの更なる制裁 sanctions」法案は「イランとの枠組み同意案」を直接否定する法案ではありません。しかし、内容が現行の制裁の上に上乗せするものである以上、もしそれがそのまま通れば、現行の制裁すら解除する「枠組み案」を否定することになることは明らかです。これが論議の焦点となり、議会では何らかの改定案が出される可能性は十分です。従ってアメリカはいよいよ「大統領 対 議会=国民の総意」の対決を見ることになるでしょう。

 

オバマ大統領のアメリカ国民に対する報告

 

毎週土曜日朝に大統領が国民に対してビデオ・メッセージを送りますが、この4月4日のメッセージでは、大統領が妥結したばかりのイランとの交渉内容を下記のように説明しています。

「このイランとの枠組み取決めは、最も本源的で、粘り強い外交交渉の結果としてまとめられたものです。それは私たちの望む目標の核心に合致し、イランが核兵器に到達するためのあらゆる道を閉ざす目的に適い、彼らの核開発計画を厳しく制限する内容となっている、よい取決めです。

この取決めは、イランが核爆弾を造るに必要なプルトニウムを得させないようにし、兵器にするために必要な強化ウラニュームを造らせないことを目的としたものです。そしてその材料をストックとして蓄積しないことにイランは同意しています。それに加え、国際的に選ばれた検査官がいつも自由にイランの核開発基地に出入りして検査することを可能にし、もしイランが違反すれば、それが即座に世界に知れ渡るようになっています。もし何か疑わしいと思われる時は直ちに検査出来ます。ですからこの取引はお互いを信用することに基づくものではなく、未だかってなかった程のきびしい検証に基づいているものです。

この取決めは十年以上の長期に渡るものであり、その厳しい制限は未曾有のガラス張り検証によって20年あるいはそれ以上の長期継続が期待出来るプログラムです。しかもイランは「核兵器開発禁止条約Nuclear Non-Proliferation Treaty」 のメンバーとなり、核兵器開発は将来も許可されません。

以上の見返りとして、アメリカを含む国際共通社会は、今までに課せられたイランに対する制裁 sanctions を段階的に解放することに同意します。但しイランが取決めに違反すれば、解かれた制裁は直ちに元に戻されます。それに加え、アメリカ独自のイランに対する種々の制裁もすべて継続して課されます。

多くの重要な細目事項は、6月末までの三ヶ月間に決定される必要があり、すべてが同意されるまでは何も同意されてはいないことを意味します。この間もしイランが後戻りするようであれば、何の取決めも成立しません。

さて私は、これからアメリカ国内において激しい討論をすることになるでしょう。特に、議会Congress を通じてアメリカ国民に今回の取決め内容の主要な部分をすべて詳しく説明する予定です。その際にイランの核問題に対処するには次の三つのオプションしかないことを忘れないでいて下さい。最初のオプションは、イランの核開発施設を爆破することです。しかしそれをしてもイランの核開発を数年遅らせることにしかならず、その間中東にもう一つの戦争を招くことになるでしょう。次のオプションはイランとの交渉を打ち切って制裁 sanctions だけに頼るオプションです。しかしそれはイランが核開発をどんどん進めることを許すことになりよくありません。そこで最後のオプションは、今私が説明した厳しい検証を基にして、平和裏のうちにイランが核兵器を持つことを防ぐことが出来る一番よいオプションです。

大統領として、又アメリカ軍総司令官として、私は今回イランと取り決め同意した「枠組み」を推進する方法がアメリカのためだけでなく同盟国と世界にとっても最良の方法であると堅く信じます。

但しこの枠組みを細部まで取り決めるためにはまだ多くの仕事が残っております。外交交渉とは実に忍耐を必要とする骨の折れる仕事です。そしてそれが成功することを必ずしも保証しません。しかし本日、私たちはイランとの交渉を平和裏に達成する歴史的機会を得ることが出来たと信じ、それをご報告致します。そのために世界の国々(今回交渉に参加した5カ国)が私たちをしっかりと後押ししてくれております。そしてこれからの数ヶ月は、アメリカが今までの世界をリードして来たと言うアメリカにとっての最良の伝統を保持するために一層の働きをしなければならないと信じております。」(以上)

 

スイスで合意した取決めの枠組みに対して、ナタニヤーフ首相とオバマ大統領の見解をご紹介しましたが、両者の見解があまりにも違うことに皆さんは驚かれたと思います。私も驚きました。当然ながら私は、オバマ大統領の言うことが正しいと信じたいです。彼が嘘を言っているとは思えません。しかし、それではなぜイスラエル首相はこの交渉結果に真っ向から反対するのでしょうか。

それはイランと言う国が、こと約束事に関しては過去の実績から見て、全く信用出来ないからであると思います。ですからオバマ氏も断っているように、この大枠取決めをイランが忠実に守るとは考えられず、オバマ氏自身もイランが違反することをまるで前提としているように聞こえます。彼としては表向きあくまで大義名分の正論を唱えて取決めにこぎつけたという「功績」を世界に訴えることによって、米国大統領として自分の残すレガシーとしたいのではないかと言われても致し方ないと思われます。

問題は、オバマ氏の説明は表向き非常によいようですが、抜け穴が非常に多いことです。例えばイランは今まででも国連の監視視察団にすべてを見せることを極力しないようにして来た事実とか、今回最も重要と思われる地下施設には触れていないこととか、実質的にイランが暗に核兵器開発を続行出来る可能性を残しています。つまりイランが全く信用出来ない相手であることを百も承知で取決めを結ぶこと自体が意味がないどころか、かえって隠れ蓑を与えてイランの核兵器開発を許す「悪契約」であると言う疑問の方が大きいと言うことのようです。

ぜひアメリカのために、このイラン問題のためにお祈り下さい。なぜならアメリカが実質このイランとの取決めを推進することによって、イスラエルを不利におとしめることになるからです。その結果アメリカが今の時点で神からのろわれるとなれば、アメリカの力はみるみる衰退して行き、その結果、世界は急速に悪い方に進むことが危ぶまれます。特に日本はアメリカにおぶさっているところが多く、多大の影響を受けるでしょう。(終り)ー 尚、このメッセージは昨年11月22日に私が書いた記事の続きとしてお読み下されば幸いです。


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